家政学雑誌
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座椅子の背凭れの傾斜角度の検討
菊沢 康子
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1981 年 32 巻 8 号 p. 632-638

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抄録

座椅子の背凭れの傾斜角度が座り心地に与える影響を分析するため, 肘掛け, 枕凭せのない座椅子を用いて, 座姿勢の分析, 座り心地テスト, 筋活動および接触面積の測定を行った結果次の結論を得た.
1) 座椅子使用時の姿勢としては, 「投げ足」姿勢が最もよくとられており, そのつぎには「立膝」姿勢がよくとられていた.
2) 「投げ足」姿勢で座椅子を使用する場合の背凭れの傾斜角度については, 最も座り心地がよいという評価が多かったのは105°のときであり, ついで110°のときであった.115°以上になると身体の一部に痛みを訴えるものがみられ, 傾斜角度が増大するほど痛みを訴えるものが増加した.
3) 筋活動量は, 背凭れの傾斜角度が100~115°において最も少ないが, 120°を越えると筋活動量は増加し, とくに首, 肩, 背の僧帽筋および大胸筋の活動量の増加が著しいことが認められた.
4) 背跡, 座跡の接触面積は, 背凭れの傾斜角度の増大とともに減少するが, 110°付近ではその面積は一時的に増加傾向を示す.さらに傾斜角度が増大すると接触面積の減少傾向は顕著になる.
以上の結果より, テレビ視聴のような行為に肘掛け, 枕凭せのない座椅子を使用する場合, 背凭れの傾斜角度は105~110°が適当であると考えられる.

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