家政学雑誌
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走査型電子顕微鏡観察によるファイバーブレッドの組織構造について
永井 鞆江今村 ひとえ
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1981 年 32 巻 8 号 p. 639-644

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抄録

ファイバーを添加したパンの組織構造は無添加パンに比較して特異な像を呈した.無添加パンの気胞膜は均一でなめらかなたん白質シートの表面をもち, α化されたでんぷん粒が連続してそのシートの下に横たわっているのが観察された.一方, ファイバーパンの気胞膜の表面は全体的になめらかさが失われ, たん白質シートの不均一性や多孔性を示し大小さまざまな気孔や亀裂を生じていた.とうもろこし外皮入りパンはたん白質シートの下に横たわっているでんぷん粒の根元の部分での亀裂が顕著に観察された.小麦ふすまやごぼう残査入りのパンでもファイバー粒子の存在している部分のたん白質シートの破壊が顕著で, ごぼう残査の場合, でんぷん粒を抱きこんだまま塊を形成したり, 厚いフィラメント状になって網目構造を呈していた.こんにゃく精粉はこれら三者と異なった像を示し表面に無数の気泡を生じ, しかも, その部分が一段と薄くなって破壊されたり, 大きな気孔や空洞を形成していた.このように, ファイバーパン全体に共通して観察された気孔や亀裂はグルテン組織が焼成段階で膨化力に抵抗しきれなかったことを示唆しており, その結果, パン膨化量低下の一因になっていると推察される.

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