家政学雑誌
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伊香式 (余呉型) 住居の変容について
滋賀県伊香郡余呉町・木之本町山村部落の場合
岡崎 文子
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1982 年 33 巻 5 号 p. 260-270

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抄録

伊香郡山村部落に残存する伊香式住居の主として昭科期以降のおもな変容点を, 部落の環境評価 (気象や交通立地, 経済基盤等の総合により, 上, 中, 下位に分類) により比較すると次のようになる.
1) 民家は, 環境評価の低い部落に多く残存する.それは, 上位部落を中心に昭和45年頃から盛んに民家の建替が行われたからである.この建替に関する部落差には, 一般的な条件としての民家老朽度や経済力のほか, 種々の部落事情 (部落民の民家観青少年流出阻止の対策, 大工の技術競争や新築刺激などによって生じる建替ムードなど) が関係する.
2) 伊香式住居特徴の妻入りは, 下位部落ほど保持率が高く, また, 民家が一本の道の両側に並ぶような単純な民家配置部落に多く残る.
3) 一般に, 民家の内部空間の変化期は上位部落ほど早い.これには, 中, 下位部落に豪雪地が多く, いろりの閉止期の遅れも関係する.しかし, 中位部落でも江戸期の宿場で進取的な風潮を残し, かつ, 昭和初期から職業の多様化の目立った部落の民家は各変化期がもっとも早い.
4) 民家の改造は, 昭和30年代末から40年代中心に, おもに炊事場フロ, 便所の設備改善に重点がおかれ, あわせて建具類の新建材が採用されたが, これは上位部落ほど早期に実施された.食事の椅子座も上位部落に多くとり入れられ, 30~38%をしめる.

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