家政学雑誌
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手打ちめんのゆでによる脱塩について
市川 朝子速水 千嘉子板橋 文代
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1984 年 35 巻 2 号 p. 69-75

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抄録
手打ちめんで生地をこねるさいに加えた食塩が, ゆで操作中にゆで液へ溶出する割合を知る目的で, 食塩添加量, ゆで時間およびゆで水量を変化させた場合について塩素比色法による分析を行った.その結果,
1) 粉重量の2, 4, 6, 8%量の食塩添加めんの食塩溶出率は, ゆで時間8分, ゆで水量15倍の場合, 約90%であった.
2) ゆで時間を変えた場合の4, 6%試料の溶出食塩率は, 6分の場合やや低い値で, 6分と8分の間に差が認められたが, 8分と10分の間に溶出率の差は認められなかった.ゆで時間としては, ゆで水への食塩の溶出量が増加しなくなるまでの時間を考慮し, 本条件では8分以上が必要と考えられた.
3) ゆで水量を変えた場合, 4, 6%試料の溶出食塩率は, 5倍量では両試料ともに70%台の値となった.4%試料は, ゆで水量の増加につれて値は増し, 25倍量では95%ちかい値となった.しかし6%試料は, 15倍, 25倍間に差はあまりなく, いずれも90%前後の値であった.
4) 官能検査により, 食塩添加量4%以上のめんの塩味が有意に識別された.また, 4, 6%食塩添加めんの塩味は, ゆで時間, ゆで水量の違う場合, 有意に識別された.6%食塩添加めんのおいしさは, 8分ゆで, 15倍量のゆで水の試料が好まれた.
以上の実験結果を総合してみると, 食塩添加めんはゆで操作によって約90%の食塩をゆで液へ溶出し, 4, 6%食塩添加めんの残塩量は0.098%と0.128%と算出された.これは官能的には, わずかな塩味と感知され, ゆでめんには, つけ汁や調味料が必要とされる.
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