家政学雑誌
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衣生活システムの理論的・実証的研究 (第2報)
サラリーマンの服装に対する規範意識の構造
中川 早苗
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1984 年 35 巻 4 号 p. 253-260

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抄録

サラリーマンの服装に対する規範意識調査結果から, 次のようなことが明らかになった.
1) サラリーマンの職場での服装には, 制服を採用しているところを含めて, 何らかの規制を設けているところが多く, まったく自由なのは10%にすぎない.
2) 背広・ネクタイスタイルへの評価結果では, 夏の暑さや立ち働きにはマイナスの評価をしているものの, ファッション性や実用性, 経済性, 社会性などプラスの評価をしているものが多い.
3) 職場での服装には, ほとんどの人が「身だしなみや清潔感」, 「働きやすさ」に留意しているいるが, さらに商・工・サービス自営や管理職に従事している人では「落ち着きや品位の表現」を, 専門・技術職や事務職では「社風や職場の雰囲気に合わせる」を重視している人が多い.
4) 規範意識に関する因子分析結果から, 威信性重視因子, 連帯性重視因子, 標識性重視因子, 容儀性重視因子, 背広・ネクタイ愛好因子の5因子が抽出された.
5) サラリーマンの服装に対する規範意識は, 期待の意識, 原理の意識, 慣例の意識, 欲求性向の四つの下位意識から構成されていることが明らかになった.
6) 職場での仕事が中心のサラリーマンにとって, 服装は社会的承認を得たり, 他の成員との人間関係をうまく調節し, 仕事をより円滑に遂行するための便宜的な適応手段として重要な意味をもっており, なかば制服化している背広・ネクタイスタイルがその最も無難なパターンとして支持され愛好されていることが明らかになった.

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