家政学雑誌
Online ISSN : 1884-7870
Print ISSN : 0449-9069
ISSN-L : 0449-9069
幼児期の相互交渉の形成について
保育園3歳児, 4歳児の場合
岡野 雅子
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 35 巻 4 号 p. 261-269

詳細
抄録

社会性の発達のうえで幼児期の重要な発達課題である同輩児との相互交渉の形成について, 保育園入園後約2ヵ月経過後の3歳児, 4歳児の場合を観察することにより明らかにすることを試みた.
1) 幼児期の子ども間の相互交渉の形成は, コンタクト数の増加の観点からは, 年齢による発達的要因が大きい.
2) コンタクトの手つづきは, 3歳児と4歳児の差異としては3歳児では模倣や動作による働きかけの占める役割がまだ大きいが, 4歳児では言語による働きかけが著しく増加する.保育園へ新入園した慣れない段階では, 他児からの模倣や動作による働きかけもよく受信するが, 保育歴が長くなるのにともない敏感さを失い, 言語による働きかけが相対的によく機能するようになる.
3) 言語によるコンタクトは, 明確な方向づけをもつことから相手の反応をひき出すことが容易であり, 距離が離れていても可能で, 複数人の反応をひき出すこともでき, コンタクトの成立にとって有効な手つづきであるといえる.異性間や3者以上の複合的な関係の形成には言語による働きかけはさらに大きな役割を果たしていると思われる.
4) 明らかな性差が認められ, 男児のほうがコンタクトが多く, 自分から他児に働きかける割合が高く, 相互交渉の形成に対して活発であるといえる.男女とも同性児とのコンタクトが多いが, 男児が男児とコンタクトをもつ割合はより高い.男児→女児は言語により, 女児→男児は動作による働きかけが多いが, 男児には女児からの模倣・動作による働きかけは受信されにくい.また, 3者以上の複合的な関係の形成は, 男児が有意に多く, 同性のみの3者以上の関係は男児の場合は半数近いのに対し, 女児の場合には20%に満たない.
5) 3歳児で3事例中1事例に, 4歳児で6事例中4事例に, 相互に活発なコンタクトを行っている親密な特定児の存在が認められる.その2者間においては, 模倣や動作による働きかけもコンタクトとして再び有効に機能していることが見いだせた.

著者関連情報
© 社団法人日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top