家政学雑誌
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澱粉糊液のゲル化過程の力学的性状
赤羽 ひろ原田 佐和子中浜 信子
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1985 年 36 巻 7 号 p. 484-491

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抄録

馬鈴薯澱粉, 小麦澱粉, とうもろこし澱粉の濃度4, 5, 6w/v%糊液のゲル化過程の力学的性状の変化について検討を行うため, 澱粉糊液の動的粘弾性率, みかけの粘性率, テクスチャー特性値の25℃における0~2時間の経時変化を測定し, 次のような結果を得た.
1) 動的弾性率と動的損失は馬鈴薯澱粉糊液では, どの濃度においても経時変化はほとんど認められなかった.しかし, 小麦澱粉糊液, とうもろこし澱粉糊液では濃度が増すにつれ, 経時的に動的弾性率, 動的損失の著しい増加傾向がみられ, とくに, とうもろこし澱粉糊液の増加が大であった.
2) 損失正接は馬鈴薯澱粉糊液を除いて経時的に変化し, 小麦澱粉糊液の6w/v%では1時間, とうもろこし澱粉糊液の5w/v%では30分, 6w/v%では15分において減少から停滞あるいはいくぶん増加の傾向に変化した.
3) みかけの粘性率の経時変化は, いずれの糊液においても動的弾性率と同様の傾向を示した.
4) テクスチャー特性値の硬さの経時変化は, いずれの澱粉糊液についても動的弾性率と同様の傾向を示した。付着性は経時的に増加の傾向がみられたが, 6w/v%小麦澱粉糊液, 5, 6w/v%とうもろこし澱粉糊液では増加ののち停滞あるいは減少した.凝集性は損失正接と同様, 経時的に減少の傾向がみられたが, 6w/v%小麦澱粉糊液, 5, 6w/v%とうもろこし澱粉糊液では減少ののち, 停滞あるいはいくぶん増加した.
5) 動的弾性率, 損失正接, 凝集性の関係から, 動的弾性率が約1.75×102 (dyn/cm2), 損失正接が約0.45, 凝集性が約0.78 (R.U.) に澱粉糊液のゾルからゲルへの転移点の存在が示唆された.
6) 動的弾性率と付着性の関係より, 付着性はそれぞれの澱粉糊液固有の性質であることが示された.
なお, 本研究は昭和56年度文部省科学研究費補助金 (奨励研究 (A)) によって行われたものである.

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