女子大学生と軽労作主婦各 11 名について, 連続的に心拍数の測定可能な携帯用心拍数記録装置を用いて心拍数を測定し, 酸素摂取量との関係から求めた消費エネルギー量と, 同時に行った生活時間調査に基づく RMRから計算した消費エネルギーと食物摂取から求めた摂取エネルギー量との比較検討を行った.
1) 安静時の心拍数と酸素摂取量および運動時の心拍数と酸素摂取量を測定から求めた心拍数 (
X) と酸素摂取量 (
Y) との回帰方程式は, 女子大学生が
Y= 0.256
X-11.763 (
Y : O
2摂取量 (ml/ kg/ min),
X : 心拍数 (回/分)), 主婦が
Y= 0. 254
X- 12.797 (
Y : O
2摂取量 (ml/kg/min),
X : 心拍数 (回/分)) で, 女子大学生, 主婦とも, 心拍数と酸素摂取量間の相関係数は,
r= 0.9以上であった.
2) 1日の心拍数の分布は, 女子大学生と主婦ともに1分間あたり60~99回に集中していた.
3) 1日の生活行動における体重 1kg あたり, 1分間の消費エネルギーは, 女子大学生は平均 0.031 kcal, 主婦は平均0.027kcalであった.
4) 消費エネルギーは, 心拍数から求めると, 女子大学生が平均2,265kcal, 主婦が平均 2,007 kcal となるが, RMRから求めると, 女子大学生が平均1,965 kcal, 主婦が平均2,137 kcal となり, 心拍数と RMR から求めた消費エネルギーは
t 検定の結果, 女子大学生に 5%の危険率で有意差が認められ, 主婦には有意差がなかった.また, 食事調査から算出した摂取エネルギーは, 女子大学生が平均1,683 kcal, 主婦が1,907 kcal で, 心拍数からの消費エネルギーにくらべると, 女子大学生は差が大きく,
t検定の結果でも1%の危険率で有意差が認められたが, 主婦は有意差が認めらなかった.
以上, 今回新たに行った心拍数測定と酸素摂取量から求めた消費エネルギーと, 従来から用いられているRMRによる生活時間調査から算出した消費エネルギーを比較すると, かなり近い数値を算出することができた.
携帯用心拍数記録装置を用いて測定を行った結果より個人の心拍数と酸素摂取量からそれぞれの消費エネルギーを算出することは, かなり使用度の高い可能性があると判断される.しかし, 心拍数はいろいろな因子 (労作強度, 精神面, 生理面) の影響もあるので, 心拍数から消費エネルギー量を推定するためには, この点について十分な注意, 検討が必要と考えられる.
なお, 本報の一部は, 日本家政学会中部支部第29回総会で発表した.
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