日本家政学会誌
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衣服-皮膚空間における皮膚からの発散物質について (第1報)
高野倉 睦子神山 恵三
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1987 年 38 巻 2 号 p. 123-128

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抄録
環境条件, 衣服の形態や素材が, 衣服一皮膚空間に存在する皮膚から発散された不感蒸泄, 炭酸ガス濃度におよぼす影響について検討することを目的として実験を行った結果, 次のような結論を得た.
1) 皮膚からの不感蒸泄の蒸散, 炭酸ガスの発散には, 環境温度ぼかりでなく潜熱因子が深く関与した.
また, 同一環境条件において, 不感蒸泄は30分まで増加するが, その後はあまり変化しない.一方, 炭酸ガス濃度は30分以後急激に増加し, 可視発汗がおこるとこの傾向は顕著であった.
2) 生理的飽差は, 中程度の環境で最も大きい値を示し, 皮膚からより多くの水分蒸散が可能であると考えられる.
3) 衣服下の不感蒸泄, 炭酸ガスは, 衣服を重ねて着用することによって蓄積した.また, 1枚のみ着用する場合, 着用衣服の素材は衣服下の空気層の状態に影響を与えることが明らかとなった.
4) 実効温度と衣服下の露点温度の回帰式は高い相関係数が得られ, 危険率1%で有意差が認められた.また綿の実験服のほうが毛より回帰式の傾きが大きく, 実効温度の上昇に伴う不感蒸泄の蓄積が顕著であった.
5) 衣服下の炭酸ガス濃度は, 環境温度の上昇に伴い増加するばかりでなく, 着用衣服の素材によって, 蓄積された炭酸ガスが何らかの力によって外気に排出されるという「ふいご効果」が起こった.衣服の形態による差は認められなかった.
本実験において不感蒸泄, 炭酸ガス濃度の測定は毎分0.3mlというたいへんゆっくりした速度で吸引したが, 微気候の測定は不感蒸泄, 炭酸ガスが皮膚から発散されてくる速度と同じであることが望ましく, このことは今後の課題であると考える.
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