日本家政学会誌
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高校女生徒の衣生活意識
高等学校衣生活教育に関する考察 (第2報)
金原 ちゑ子藤枝 悳子大森 和子加藤 敏子
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1987 年 38 巻 7 号 p. 635-642

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抄録

以上の調査結果と考察をもとに, 高等学校における衣生活教育のあり方を, 消費者教育との関連を考慮して研究した結論として次の6点をあげる.
1) 高校女生徒は, 身だしなみよく着たり, 自分にあう服装を工夫したりして楽しんでいる者や, TPOに応じて個性的に装うことを望ましいと考えている者が増加している.これらのことは, 学習事項として個性的な服装のととのえ方とその常識を身につけたいと希望する者の多いことによってもわかる.自己にふさわしい被服を適切に着用して個性を表現することが重視され, 衣生活の審美性・快適性の追求および好みや楽しみ志向が強くなっているとみられる.椙山らの著書に, 高度な科学的技術の発達, 生活水準の上昇に伴って生活意識が変化し嗜好性が強まり, 多様化現象を示し, 人間的に豊かな衣生活を望むようになってくる, 現在の衣生活の傾向をみると, 合理化と感覚化の現象が共存しており, さらに多様化, 流動化, 消費化などの現象も考えられるとあるが, こうした傾向は今後いっそう強まることと思われる.また, 清潔で身だしなみよく着るように心がけている者も多く, 健全な衣生活の状態がうかがわれる.
以上のことから, 人間と被服との関係および被服の機能を考えて衣生活を設計し, 被服の使用価値を大にする工夫創造の能力を育てるようにする必要がある.この場合, 着用者の体形, 心情, 生活等を理解し, 用と美の両面から考えて被服を選定し, 着装することを重視したい.なお, 下着についてもその機能を理解させ, 適切な着用を習慣づけたいものである.
2) 不要な被服はもたないようにする, 被服費が少なくてすむようにするなど, 経済面を考えたり, 合理的な衣生活をしようとしたりする者が増加している.しかし, むだな費用を被服に使わないようにしている者が大幅に減少している.物資の豊かな時代においても, 被服の合理的な選択, 購入, 管理の能力を十分に養う必要がある.
3) 家族の衣生活に協力し, 購入や洗濯などを手伝う者が減少している.このことは現在, 家庭における衣生活に関する仕事が軽減していることや高校生自身の生活の様相にもよろうが, 自分の衣生活のみでなく, 家族の衣生活にも協力する能力と態度を育てるようにしたい.
4) 既製服を購入して能率よく着用することを望ましい衣生活と考えている者が, 前回より増加している.このことは, 既製品を上手に選ぶ能力を身につけたいと希望する者が最高率を占め, 前回よりも増加しているのと合致している.福島県の調査研究によっても, 「家庭一般」履修者981名のうち95%以上は日常着を既製服に依存しているという.既製服利用は, 被服産業の発達, 有職婦人の増加などとともに今後いっそう伸びる傾向にある.着用者の個性や着用目的や条件のもと, 材質, デザイン, 縫製, 価格等を考えて意思決定するなど, 被服の選択・購入の重点を指導する必要がある.
なお, 既製服について染色, 縫製, 表示などに関する苦情がある場合には, 業者や消費者センター等に申し出るという消費者としての権利を行使すべきであることを理解させ, 実践するように指導する必要がある.
5) 基礎的な被服製作の技術を学びたいと希望している者は, 前回よりも大幅に減少している.また, 関心のある衣生活に関する仕事のうち, 製作技術的なものは低率になっている. 4-4) で述べたように, 既製服利用が多くなっていること, 家庭生活における被服製作の必要度および技能が低下したこと, 被服製作に対する興味・関心が低くなったことなどによるものと推測される.被服製作の学習を希望する者が減少しているとはいえ, 被服製作を通して, 衣生活に関する知識と技術を習得させることは重要であると考える.製作という実践的な学習活動によって, 高校生に物を作り生活に活用する喜びを味わわせるとともに, 巧緻性, 計画性, 科学性, 創造性などの資質を養うことができる.また, 消費者として基本的な意思決定の能力を育てることができる.このために, 被服製作の基礎的・基本的な事項を押さえて, 意欲的に学習させるように指導方法を工夫する必要がある.
6) 被服の洗濯や手入れの仕方の学習を希望し, 管理技術的な仕事に関心を寄せる者が前回より高率になっていることは, 衣生活の保健衛生・整容・安全・経済のうえからも, 被服の有効利用のうえからも望ましいことである.衣料や洗剤, 用具などに関する知識を習得させ, 合理的な被服管理能力を養うとともに, 日常生活に活用し, 習慣化するほか, クリーニング業等の利用についても取り上げる必要がある.

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