日本家政学会誌
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衣服設計の立場からみた肥り痩せの意識
植竹 桃子
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1988 年 39 巻 7 号 p. 711-723

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抄録

若い日本人成人女子 250 名, 中年の日本人成人女子119 名, 若い日本人成人男子 123 名を対象とする, 自己の身体形態および衣服の着用に関する意識調査と身体計測結果から, 肥り痩せに対する意識が自己の身体像においてはどのような意味をもち, 身体の外形的測度からとらえられる肥り痩せとどのように関係しているのかを把握した.さらに肥り痩せの意識が衣服の選択行動にどれだけ関連しているのかを把握して, 衣服設計の立場から肥り痩せを考察した.結果は, 以下のとおりである.
1) 若い成人女子は, 身体の高さ・長さに関する意識よりも太さに関する意識のほうが強い.そして一般に体幹は短く細く, 体肢は長く細く, 小さく, 身長は高く, 体重は軽いことに満足感が得られ, またそうなることを理想としている.しかし胸部・バストはその例外で, 一意的な傾向にはない.
2) 若い成人女子は, 身体計測値からは肥りと判定されない個人でも, おおかたは自己を肥りと感じている.
3) 総じて, 若い成人女子は, 強いスリム志向というかたちで肥り痩せの意識が強い.このスリム志向は, 中年女子よりもやや強く, また同年齢層の男子では, たくましくあることに満足するという点でスリム志向の様相が異なる.
4) 若い成人女子では, 肥っているという意識の強い者ほど, 被服面積の少ない衣服すなわち身体を露出した衣服, また身体にぴったりした衣服を, 似合わないと思いまた着用しない傾向にある.
5) 以上のように, 「肥り痩せ」は衣服設計上, 非常に重要な問題であり, 衣服の選択行動にまで影響することが明らかとなった.したがって, 衣服設計においては, 衣服をからだつきに適合させる点のみでなく, 着用することでスリム志向を満たそうとする点にも十分配慮することが必要と考えられる.

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