日本家政学会誌
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学生の食事作りに関する行動調査 (第1報)
食品購入時の行動と食事の内容
馬路 泰蔵長野 宏子
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1988 年 39 巻 7 号 p. 735-741

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抄録

大学生を対象として, 食品の購入から調理にわたる食事作りの行動を観察し, 食品購入時の行動と食事の内容について男女を比較した.
1) 購入食品の種類数は男女に差がなかったが, 男性は購入時間が長かった.男性は, 加工食品の選択などにかかわる行動, 会話・確認などの行動および店内の移動などの行動の種類が多かった.同時に, 「加工食品の表示にある調理法を読む」, 「ひとりごとを言う・観察者に話しかける」および「売場の前に立って商品を眺めるようす」の行動を行った人数は, 男性のほうが多かった.これらの結果は, 男性は調理法について何らかの情報なしにすみやかに購入食品を決めることが困難であることを示している.
2) 男性は女性にくらべて, 主食を除くと料理は外来風に片寄る傾向があった.また, 男性は緑黄色野菜ときのこ類の利使用者数が少なく, インスタント食品の使用が多かった. さらに, 基本的調味料の使用数が少なく, 副材料および調味料として使用される食品の種類も少なかった。以上の結果は, 男性は食に関する知識・技能が少ないため使用できる調理法と食品が制限されることを示唆している.
3) 主食を含む全料理中の脂質エネルギー比は, 男女とも高い食事が多くみられた.
4) 男性は緑黄色野菜の使用者が少なく, ビタミン A の少ない食事は男性にのみみられた.また, 栄養上考慮したことについて, 男性は女性よりあいまいな表現によって栄養素に関する留意点を述べた.これらの結果は, 男性には食品中の栄養素量についての知識が乏しく, その知識の不足がビタミンA不足の食事を作るという結果をひき起こしたものと思われる.
5) 男性は, インスタント食品を多く購入し, 料理に使用していた.また, 女性は食物の安全性に関して食品添加物を考慮したと回答したのに対し, 男性は食品添加物についての回答がなかった.これらの結果は, 男性は食品添加物に関して知識が少ない, または関心が低いことを示唆している.
本研究は, 昭和 59 年度文部省特定研究経費「教員養成における教授プランニング・スキルに関する研究」によって行われた.
本研究の一部の要旨は, 昭和 60 年度日本栄養・食糧学会総会において発表した.

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