日本家政学会誌
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単身高齢者の住戸規模に関するニーズ
高阪 謙次
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1990 年 41 巻 4 号 p. 333-340

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抄録

(1) 食寝分離は, 第一に, 食事スペースに接客・くつろぎ等の機能が, 就寝スペースにプライベートな行為のための機能が含まれる可能性が大きいことと, 第二に, 分離可能な単身高齢者の多くが食寝分離を行っているという実態からして, 個々にはワンルーム化した住み方があったとしても, 基本的には単身高齢者にとっても基礎的な住要求として位置づけられる必要があろう.データの面からも, 条件さえあれば多くの単身高齢者は食寝分離をしていることが確かめられた.食寝分離を多くの単身高齢者が達成できるために求められる居住室規模は, 2室以上, 合計10.5畳以上である.
(2) 単身高齢者が生活する上で基本的に必要な家具を収容するために必要な居住室の規模は, 10.5畳内外以上である.
(3) ベッド使用者については最低限10.5畳の居住室が単身高齢者の要求である.
(4) 都市部の単身高齢者が適当と認識している居住室規模は, 10.5畳以上18畳未満が最も多い.農漁村部ではこれよりも大きくなる.
(5) 以上, 食寝分離, 家具保有, 規模認識の三つの点からいって, 現時点では, 都会部に居住する単身高齢者の住戸規模の要求は, 居住室にして10.5畳 (17.5m2), 居住室面積率を60%ほどと仮定した場合の住戸専用面積で30m2 (壁心計算) ほどということになる。これは, 最初に述べた第五期住宅建設五か年計画の中高齢単身世帯向けの最低居住水準 (25m2) よりは少し大きな値, 同じく都市居住型誘導水準 (43m2) を下まわった値である.農漁村部は都会部よりも大きな値の要求となっている.
ちなみに国際的には, 英国の公的資金による賃貸住宅の単身高齢者向きの基準は34m2 (内法面積), スウェーデン, デンマーク, 西ドイツの単身高齢者向け公的賃貸住宅は最近は通常40~50m2 (内法)等, 欧米の多くは30~50m2となっている.また国際住宅・都市計画会議 (IFHP) は1970年のケルン勧告で単身者向け35.5m2 (内法) を推奨している。これから考えても, 都会部の単身高齢者が必要としている30m2ほどの値は, 妥当なものとして位置づけられることができるであろう.

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