日本家政学会誌
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食料品目別支出金額からみた都道府県間の類似度とその規定要因
森 英子
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1990 年 41 巻 4 号 p. 351-359

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抄録

昭和59年全国消費実態調査報告の都道府県別中分類23食料品目別支出金額をデータに, 47都道府県間の食料構成の偏差パターン類似率を算出した.
(1) 最類似・最非類似の都道府県の組合せにおいては地理的距離 (地域特色を生じる) の影響が顕著であった.
(2) しかし全組合せを概観して, 地域的要因と同程度に都市的要因 (地域とは関係なく大都市になるほど支出額が増加する社会的要因) が影響し, さらに都市的要因とかなり重複して所得水準に基づく全食料費支出水準が影響していることが考察された.
(3) 昭和55年次の県庁所在都市間の類似率と昭和59年次の都道府県間の類似率の比較を行った.
東京都区部と県庁所在都市, 東京都と道府県単位の類似率を比較し, 道府県単位類似率が県庁所在都市単位類似率より高い道府県は4年間に食料支出水準の向上があり, 逆に県庁所在都市単位類似率が道府県単位類似率よりも高い道府県は, 昭和55年次に県庁所在都市と道府県間に食料支出水準の差があり, さらに4年間に道府県単位で支出水準の向上がなかった (停滞) か, 低下したかと考えた.県庁所在都市類似率と道府県単位類似率がほとんど等しい道府県は, 県庁所在都市と道府県単位の食料支出水準が均等化しており, 4年間に道府県単位で食料支出水準に変化がなかった (停滞) と考えた.
(4) 23食料品鼠の, 類似率に対する影響度は, 標準偏差値が大きい外食・肉類・生鮮野菜・調理食品等の影響が大で, とくに標準偏差値が大きい外食の影響が著しかった.標準偏差値が大きい品自に都市的な品目が多く, そのために地域的要因を凌ぐほどに都市的要因の影響が大であった.
さらに, 南九州諸県と北海道・青森・岩手県はともに全食料支出水準か低いために地域を越えてやや類似していることにみられるように, 所得水準が直接には全食料支出水準が, 生鮮魚介・肉類・果物・菓子等の地域的品目の影響を薄める結果になった.
(5) 23食料品目の標準偏差の大小にかかわらず, 各品目の類似率算出に対する影響を均等にするために, 各品目支出金額の平均からの偏差値を標準偏差で除して規準化した数値をベースにすることが考えられる.標準偏差が大きい少数の品目の影響で高く算出される類似率は, 規準化ベースによる算出ではかなり低く算出される.

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