日本家政学会誌
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煮大根の香気形成について
金 和子小林 彰夫久保田 紀久枝
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1991 年 42 巻 11 号 p. 961-966

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抄録

生大根の辛味のある刺激臭の主因であるMTBeIの加熱による変化を煮大根の香気形成との関連から検討した.煮大根の香気濃縮物をエーテル振とう抽出法とSDE法により調製し, GCおよびGC-MSを用いて香気成分を検索した.煮大根の香気は低沸点化合物に由来する硫化水素様の強い匂いのほか, 好ましい煮大根様の香気が得られたが, おもな香気成分は生大根とほぼ同じであった.前者の匂いには, MTBeIが分解して生じたメチルメルカプタン, ジメチルジスルフィド等の揮発性低沸点化合物が, 後者の匂いにはメチルチオブチルイソチオシアネートが関与しているものと思われた.生大根を加熱すると, まず熱的に不安定なMTBelの急激な分解が起こり, メチルメルカプタンやメタノール, エタノール等が生じ, 2次的にジメチルジスルフィドやジメチルトリスルフィドが形成されるが, 煮大根の加熱調理中に揮散してしまう.一方, 熱的にやや安定な生大根の微量成分は残存し, または一部生成されて好ましい煮大根香気を形成することが示唆された.

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