日本家政学会誌
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超高層住宅の居住性に関する研究 (第1報)
居住者特性
田中 智子湯川 利和瀬渡 章子山岸 雅子
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1992 年 43 巻 2 号 p. 149-158

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抄録
超高層住宅の居住者の特性を明らかにするために, 中・高層住宅居住者との比較調査を実施し, 基本属性, 住宅選択行動, 意識の面から分析を行った.その結果は, 以下のとおりである.
(1) 超高層居住世帯は, (1) 小家族が多く, 子供を持つ核家族の割合が低い, (2) 世帯主年齢が高く, ライフステージが高い家族が多い, (3) 住宅購入時の世帯主年齢が高く, 高額所得者の割合が高い, (4) 被雇用者の比率が低く, 自営・自由業の比率が高い傾向がある, (5) 共働き率が低いという特徴をもつ.超高層住宅のなかでも16階以上の上層階では, (1) 世帯主年齢が高い世帯の比率が高い, (2) 自営・自由業の比率が高い, (3) 共働き率が非常に低いという特徴をもつ.
(2) 前住宅は, どの住宅型でも大阪市を中心とする大阪府に居住していたものが多い.中層居住者は中・高層の公共借家に居住していた割合が高い.それに対し, 超高層居住者は, 高層持家, 戸建て持家からの買い換えが多い.
(3) 住宅選択理由は, どの住宅型でも「世帯主の通勤」, 「自然環境」があげられ, 都心近くの団地型集合住宅の特性を反映している.超高層住宅では, 他の住宅型で比較的強かった「広さ・間取り」などの住宅自体の性能に関する項目の重視度が比較的低く, 「超高層住宅に住みたい」, 「資産価値」を理由とするものが多く, 超高層という住宅形態を積極的に選好している.
(4) 超高層居住者は, 高層住宅居住についてのプラス評価が高く, マイナス評価の同意率は低い.この傾向は上層階居住者にとくに強く, 積極的に高層住宅を選好しているといえる.中層居住者はマイナス評価に同意する割合が高く, 住宅選択理由として中層住宅であることを指摘する割合も高いことから, 高層よりも中層を志向するグループであることがわかった.高層居住者の評価は両者の中間である.
(5) 超高層居住者は, 現在の居住階と同じか, より低い階に住み替えたいと希望するものは少なく, より高い階を希望するものが多い.超高層居住のメリットの少ない中間層に居住するものには, とくにこの傾向が強く, また現在の居住階が高いほどより高い階を希望する傾向がみられる.
(6) 定住志向は, 中層住宅居住者がもっとも強い.超高層居住者は, 積極的に高層住宅を評価して入居しているにもかかわらず, 定住志向は低く, 現在の住宅を一時的な住まいと考えているものが多い.とくに30~40代の定住志向が弱くなっている.
超高層住宅居住者は, 小家族, ライフステージの高い家族, 高収入などの世帯特性をもち, 高層階居住を積極的に選好しているが, 定住志向は低いことがわかった.このような特性は16階以上の上層階居住者に顕著に表れていた.超高層住宅の15階以下の下層階居住者は15階建て高層居住者と意識の面で異なるものの, 基本属性の面では有意な差がみられなかった.
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