日本家政学会誌
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妊娠時の植物性タンパク質栄養が出生子の発育に及ぼす影響とその栄養効果の改善
水上 戴子堀川 蘭子
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1992 年 43 巻 7 号 p. 617-627

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抄録

妊娠時のタンパク質源を植物性タンパク質のみとした場合に, 母体及び出生子の発育に及ぼす影響を検討するために, 妊娠ラットに米をベースにした食餌を投与した.タンパク質5%レベルで妊娠維持, 分娩が可能か否か, さらに出生子の発育について生後49日まで観察した.また米の1/2量を分離大豆タンパク質, 卵白アルブミン, ミルクカゼインに置き換えた場合に, 妊娠時のタンパク質栄養効果の改善がなされるか否かを検討した.精製全卵タンパク質18%食を対照群とした。結果は次の通りである.
(1) 米 (R), 米+分離大豆タンパク質 (RS), 米+卵白アルブミン (RA), 米+ミルクカゼイン (RC) 群のいずれの5%タンパク質食群も, 妊娠維持, 分娩が可能であったが, R群とRS群には出生日に子が死亡する例が見られた.授乳期間中に子が死亡する割合はR群では約17%に対し, RS群では約73%と最も高く, 米の1/2量を分離大豆タンパク質に置き換えることにより, 授乳期間中の子の生存率が低下した.RA群, RC群では出生日における子の死亡はみられず, 哺育はほぼ可能であり, 米の1/2量を動物性タンパク質に置き換えることにより栄養効果の改善が認められた.
(2) 出生子の発育については, 5%タンパク質食群のいずれも出生日において, 体重, 臓器重量が対照群に比べて減少した.授乳中の母体に正常食を与えることにより, 日齢がすすむにつれて対照群との差は縮小したが, 体重は生後49日まで対照群より軽量であった.
(3) 5%タンパク質食群の子はいずれも出生日において, 肝臓と屠体の総DNA量, 総RNA量, 総タンパク質量が対照群より減少した.生後49日においては肝臓の総DNA量, 総タンパク質量が, RS群を除いて, 対照群より低い値を示した.

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