日本家政学会誌
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衣服による長時間拘束の人体への影響 (予報)
猪又 美栄子加藤 理子清水 薫
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1992 年 43 巻 7 号 p. 691-696

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抄録

拘束性の大きい着衣を長時間着用した場合の人体への影響について, 着用者の疲労感と歩行動作時の下肢筋活動の変化から検討した.実験服は, 脛骨点の10cm下の丈でスリットのないタイトスカートとした.実験服を1日7時間, 3日間連日着用した時の, 疲労感について着用者に判定させ, 分散分析を行い, 検討した.また, 筋電図の変化については, タイトスカート着用前と8時間着用後の平地および階段の歩行動作の下肢筋活動の変化をテレメーターで測定し, 拘束の少ない着衣の場合と比較した.主な結果は次の通りである.
(1) 疲労感の調査結果では, 拘束の強い着衣の連日着用の影響が明らかに認められた.疲労症状としては, 着衣で直接拘束を受ける下肢のだるさ・重さとなって大きく現れた.中でも下腿部に共通して強い疲労感が生じる傾向がみられた.下腿部後面の疲労感は, 長時間着用による腓腹筋の筋電図の振幅の増大と関係があるものと考えられる.
(2) 強い疲労感は脱衣によって軽減されるが, 連日着用の結果, 睡眠による充分な回復が得られず翌日に疲労が蓄積するという悪循環の傾向が認められた.
(3) 拘束の強い着衣の長時間着用後の歩行において, 下肢筋の筋電図の振幅の増大が認められ, 着用者の疲労感と関係があるのではないかと考えられる。今後実験を重ねて, 明らかにしたい.

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