日本家政学会誌
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家庭科教育における自立行動の形成に関する考察 (第4報)
小・中・高・大学生の比較
兼信 英子鈴木 慶子米村 友子
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1993 年 44 巻 4 号 p. 283-289

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抄録

家庭生活に必要な自立行動の形成について, 小学生から大学生に至るまでの発達段階における自立行動の三要素 (できる行動, 必要感, 行動意欲) を調査し, 家庭生活に必要な自立行動の形成に対する家庭科教育の役割を, 小・中・高・大学生について比較検討した.その結果から, 以下のことが明らかになった. (1) 大学生は小・中・高・大学生の中で, 最も自立している. (2) 小学生は大学生のつぎに「行動意欲」が高く, 学習した知識や技能を家庭生活の中で実践しようという意欲がみられる. (3) 高校生は「必要感」を持っているが, 小・中・高・大学生の中で「できる行動」と「行動意欲」は他よりも減退している. (4) 中学生は高校生より「行動意欲」は高いが小・中・高・大学生の中で「必要感」は最も低い. (5) 中学生や高校生は, 技能を必要とする行動には意欲を示さない.
以上の結果から, 中・高校の家庭科教育においては, 自立へと導く手だてが不足しているのではないかと推察される.一人一人の自立をめざすには, 即ち, 「自立」とは, 発達段階に応じて自己教育力を培い, 自らの判断で自己の責任において行動ができることと考える.教師は, 子どもたちの家庭生活の重要性を認識させ, 教材の興味・関心を高めさせるための工夫をし, 内発的に意欲を喚起させて, 実際にやらせ成就感を味わわせることが必要である.子どもたちを取りまく人々は, 成就したときにはその成果を認め, 励まし, 称賛することが大切である.そのことにより, 子どもたちはさらに意欲を高め, 実践を繰り返し, 家庭生活の重要性の理解を深め, 「自立」へと高揚し進むと考える.
新学習指導要領では, 中学校技術・家庭科に新しく「家庭生活」領域が平成5年4月1日から導入され, 高等学校の家庭科においては, 男女必修の学習が平成6年4月1日から実施される.それらによって中・高校生の自立行動の形成が向上するように期待したい.
今後, 家庭科教育においては, 各学校段階で子どもの自立行動の形成を定着させるために, 教師が実践化を図る指導法の工夫に努めるとともに, 家庭との連携を密にしながら家庭における実践への協力を得て, 推進していくことが大切である.

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