日本家政学会誌
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クッキーの物性における小麦でんぷんの役割
倉賀野 妙子和田 淑子
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1993 年 44 巻 5 号 p. 355-361

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抄録
クッキーの物性に対する小麦でんぷんの役割を知る目的で, 小麦粉のでんぷん分画を行い検討した.得られたでんぷん3区分は, 粒度分布および糊化性状が異なっていた.
プライムスターチ区分はクッキーを顕著な横広がりに焼成した.さらに表面には凹凸が多く均一性に欠けた外観を呈し, 内部や底部にも大小の空隙が存在し, みかけの膨化率を顕著に大きくした.プライムスターチ区分のドウは擬拌時にドウ中に空気が取り込まれやすく, それが膨化を引き起こす一因となったものと考える.こうした焼成後の著しい膨化はクッキーの破断抵抗を小さくするが, 粗い多孔質組織はもろさに欠けるものにすると考えられた,
テーリングスターチ区分はクッキーをほとんど横へ焼き広げず, 内部組織の空隙は小さく, 膨化率を小さくした.そして, クッキーの破断時の抵抗を大きくし硬いものとするが, 一方ではショートネス性, クリスプ性を付与した.
小麦粉はプライムとテーリングスターチの両でんぷんが混在することで, 各でんぷんの特性がプラスに作用して, クッキーは均整のとれた外観を呈し, かつ, やわらかくてもろく, ショートネス性に富む物性になるものと推察された.
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