抄録
パルスNMRを用いる簡易水和能力測定法により食物繊維の水和能力を調べた.
食物繊維を緩和曲線の形, 相関係数 (シグナル強度の対数と遅延時間), spin-spin緩和時間 (T2) およびその成分のプロトン量比, Root mean square (RMS) から水溶性食物繊維 (SDF) と不溶性食物繊維 (IDF) に分類し, 水和に寄与している官能基を推察した.
SDFの相関係数は大きく, 遅く緩和する成分 (S-T2) のプロトン量もIDFよりも多かった.また, 一日経過後の緩和曲線の形状変化はSDFのみに認められ, そのS-T2はIDFと比べて短かった.SDFの緩和曲線の成分は単相系を示すものが多くRMSは小さいが, IDFは多相系で高いRMS値を示すものが多かった.
さらに水和能力の高い (S-T2は低い値) 多糖間での官能基の共通性を検討したところ, 6位のカルボキシラート基が多糖類の水和に大きく関与していると思われた.それに加えて, 解離基の対イオンがナトリウムイオンであるときの水和能力はプロトンであるときと比べて高い傾向を示した.