日本家政学会誌
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梅酒の香気成分と貯蔵による変化
梅酒熟成に関する研究 (第2報)
蟻川 トモ子大島 さゆり高垣 仁志
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1997 年 48 巻 4 号 p. 295-301

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抄録

梅酒の香気成分について, 減圧水蒸気蒸留法とヘッドスペース法で得られたにおい濃縮物を用い, GC-MS によって成分の同定, 定量を行った. また 1, 2, および 5 年間貯蔵した試料について貯蔵中の香気成分の変化を研究した.
その結果, 減圧水蒸気蒸留法ではアルデヒド類, 酸類, アルコール類, エステル類などを含めて 38 成分, ヘッドスペース法では減圧水蒸気蒸留では認められなかった低沸点成分 6 種を含めて 22 成分を同定, 定量した. 成分の数は貯蔵に伴って増加し, とくにエステル類は成分の数, 含有量ともに顕著に増加した. これは貯蔵中に梅の実中の有機酸が順次溶出され, 多量に存在するエタノールとエステルを作るものと考えられ、た. 最も含量の多い成分は benzaldehyde であったが, その含有量は貯蔵中に顕著に減少し, 同時に benzoic acid, 化を受け, さらにエステル, アセタールへと変化するものと考えられた.
以上により, 梅酒の香気成分は, はじめ比較的単純な組成であったものが貯蔵により複雑な組成となり, マイルドな風味に変化すると考えられた.官能検査の結果もこの推定と一致した.

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