日本家政学会誌
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北タイにおける 5 民族の耐久消費財普及から見た民族格差
益本 仁雄笠井 直美大澤 清二國土 将平
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1997 年 48 巻 5 号 p. 371-382

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抄録

筆者らが1994年11月に実施した北タイ・チェンマイ県の学童を対象にした家庭の耐久消費財普及調査から, この地域に居住する五つの民族の特徴が次のように明らかになった.
(1) 耐久消費財の普及品目数および有意差検定と各品目の普及率比較から, 平地民と山地民との問, および民族間にも有意差があることが析出された.漢族は, この地域における経済的優位性を示し, タイ族の消費生活はそれに次いで高水準であった.一方, 山地民のカレン・モン・リスの3族は, 平地民の漢・タイ2 族とはかけ離れた貧困な生活に甘んじていることが明らかになった.
(2) 一世帯あたり耐久消費財の保有額については, 各民族とも2極分化がみられる.なお, 平地民では富裕層が多いが, 山地民では貧困層が多数を占めていた.
(3) 父親の職業では, 平地民は商店主, 役人, 経営者・管理職など, 農業より比較的収入が高く, 多様な職業についているのに対し, 山地民では, 農業関連に集中していた.母親の職業でも, 父親のそれと似た傾向にあるが, 平地民では, 専業主婦や無職が1/4に達するのに対し, 山地民では専業主婦や無職は皆無か極めてわずかで, 女性も生産労働に参加していた.

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