日本家政学会誌
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中華麺のレオロジー的性質に及ぼすオレイン酸添加の影響
新原 立子
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1997 年 48 巻 5 号 p. 383-389

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抄録

(1) 原料小麦粉としてタンパク質含量 9% および11% の 2 種類を使用し, アルカリ剤 (炭酸ナトリウムを小麦粉の 0.7%) 添加および無添加, オレイン酸添加 (小麦粉の 0.5%) および無添加とし, これらの組合せで合計 8 種類の生麺を調製した. その際すべての試料に食塩を小麦粉の 1.5% 量添加した. これらの試料についてオレイン酸の添加がゆで麺の物性に与える影響をしらべた結果, オレイン酸の添加効果はアルカリ剤との併用で顕著になり, ゆで麺のかたさ, ヤング率, 引っ張り強度および伸び率が増加し, 凝集性は低下した.
(2) 小麦粉および小麦デンプンについて, 食塩水およびアルカリ食塩水中における糊化時の溶解度と膨潤度に対するオレイン酸添加の影響を調べた結果, アルカリ剤の存在が小麦粉および小麦デンプンの溶解度や膨潤度を増大させたが, オレイン酸にはこれを強く抑制する作用があることが認められた.
(3) 小麦粉について同様な実験を 30℃ で行った場合には, 溶解度および膨潤度に対するオレイン酸の添加効果はほとんど認められなかった. しかし, タンパク質の溶解性がアルカリ剤の存在によって増加し, オレイン酸の存在によってもいくぶん増加した.
(4) 小麦粉生地から湿グルテンを取り出してしらべた結果, アルカリ剤およびオレイン酸の存在により湿グルテンは集塊を形成しにくく取り出すのが困難な状態となり, 回収量が減少した.その影響は, オレイン酸 + アルカリ剤の添加が最も大きく, 次いでアルカリ剤, オレイン酸の順であった.
(5) 以上の結果から, オレイン酸はアミロースとの複合体形成によってゆで時のデンプン粒の膨潤を抑制し, グルテンに結合してその構造を変化させ, ゆで麺の物性に影響を与えると考えられるが, 中華麺においては, アルカリ剤によりオレイン酸の大半がイオンに解離するため, その影響は一般の麺に比べて大きいと推察した.

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