1997 年 48 巻 5 号 p. 407-413
銅フタロシアニン染料の生分解性を土壌環流法により検討し, 分解菌の検索を試みた.分解菌の分離にはこの染料を単一炭素源とする寒天培地を用いた. 本染料により予備吸着処理および馴養処理を施した土壌に染料水溶液を 292 日環流したところ, 環流開始後 2 週間で環流液の吸光度と Cu 2+率濃度が並行して減少し 0に近い値を示した. 一方, 滅菌土壌に本染料を環流した場合にはこのような変化はまったく生じず, 染料の分解は認められなかった.
環流土壌より本染料を単一炭素源として生育しコロニー周辺に著明な脱色域を生ずる糸状菌を分離した.この菌株の各種の性状に基づき Myrothecium verrucaria と同定した. 本菌はこの染料を部分分解して生育に利用すると共に, 生成する Cu2+を菌体中に蓄積するものと考えられる.