抄録
ジャガイモを沸騰まで加熱し, 加熱停止後もそのまま放置した調理における最適加熱時間の計算を試みた.数値的シミュレーションにおいては3次元メッシュモデルを用い, 外周節点温度は水温の実測値より求めた.試料内部温度は差分法による非定常3次元熱伝導解析により算出した.軟化過程は軟化の速度定数より軟化率の算出を行った.沸騰継続時間は試料中心温度が70℃になったときに最適軟化率が0.9になるように算出された.計算による試料中心温度と実験値はよく一致した.予測した沸騰継続時間は99.5℃の一定温度に比べ大幅に短くなった.このようなシミュレーションにより, 加熱停止時には試料が煮熟不足でも, 加熱停止後の余熱により軟化が十分に進行する過程が予測できた.この余熱効果は試料のサイズや総重量と共に大きくなった.硬さの測定および官能検査より予測値の信頼性が確認された.