日本家政学会誌
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クッキーのスプレッドファクターに及ぼすポリグリセリン脂肪酸エステルの影響
焼成プロセスにおける物性変化
倉賀野 妙子上田 隆宜久保 美華勝田 啓子
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2000 年 51 巻 1 号 p. 41-48

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抄録

乳化剤が, クッキーのスプレッドファクター (直径/厚さ) を増大させる要因を検討するために, 高親水性のポリグリセリン脂肪酸エステル添加および無添加のモデル生地を調製し, 生地焼成中の写真撮影による形態観察, 水分損失率の測定, 動的粘弾性の温度分散測定, 示差熱分析そして焼成クッキーの顕微鏡観察を行い, 以下の結果を得た.
(1) 焼成中の生地の写真 (画像) 解析の結果, 乳化剤添加生地は無添加系に比べ直径が大きく, 高さ (厚さ) の収縮が激しいために, スプレッドファクターが大となった.
(2) 加熱初期段階では, 乳化剤添加生地の水分損失が無添加系より若干抑制されていた.
(3) 加熱中, 乳化剤添加生地の貯蔵弾性率は無添加系より小であった.
(4) DSC測定結果から, 乳化剤がデンプン糊化を抑制し, 糖の溶解を阻害することが示唆された.
(5) 顕微鏡観察では, 乳化剤混入系の澱粉の構造は無添加系との差は認められなかったが, タンパク質により形成されていると思われる構造には両者に大きな差が見られた.
これらの結果から, 乳化剤の存在は生地中の水の小麦タンパク質への結合を促進し, 焼成時, 水が澱粉の糊化に利用される比率を少なくし, 水分蒸散を抑制するために, 生地の流動性が保たれ, それゆえスプレッドファクターを増大させると考えられた.

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