水資源・環境研究
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特集論説
過ちを直視して方向転換を
~要らない徳山ダムの水を引く導水路は要らない~
近藤ゆり子
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2023 年 36 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

日本一の巨大ダム・徳山ダムは、木曽川水系水資源開発基本計画に位置づけられた水資源機構ダムである。2008年の運用開始以来、新規開発水は一滴も使われていない。要らないからである。名古屋市、愛知県が建設費を負担して確保した水を使うには、木曽川まで導水する施設-導水路-建設が必要となる。徳山ダムの完成直前の2007年、関係者間で導水路計画が合意された。その導水路計画に整合するように木曽川水系河川整備基本方針・河川整備計画が策定され、2008年に事業実施計画も認可となった。だが、いまだに導水路の本体着工に至っていない。木曽川水系の水余りが誰の目にも明らかになった後も、従来型思考で水資源開発施設建設を続けてきた矛盾が、さらなる矛盾を生んでいる。不要な施設建設は、財政面でも環境面でも、将来世代に負のツケを回すことにしかならない。これまでの過ちを直視し、誤りを正して方向転換を図る、その覚悟が今、問われている。

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© 2023 水資源・環境学会
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