日本家政学会誌
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夏季におけるオートバイ用ヘルメット着用時の頭部不快要因とその客観的指標
成瀬 正春内田 有紀
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2002 年 53 巻 2 号 p. 183-191

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抄録
オートバイ乗員の頭部損傷防止のためには, 適正にヘルメットを着用することが重要である.夏季にオートバイ用ヘルメットを適正に着用しない理由の一つに, 着用時の頭部不快感がある.そこで, 夏季におけるオートバイ用ヘルメット着用時の頭部不快感の要因とその客観的指標について, ヘルメット内気候の観点から検討した.着用実験の条件は, 有風 (20km/h) と無風 (0km/h) の2条件である.気温は33.0±0.5℃, 気湿は60±5%, 気流は0.5m/s以下である.着用時間は, 30分間である.
頭部快適感を従属変数とし, 頭部温冷感, 蒸れ感, 湿潤感を説明変数とした時の第一説明変数は, 頭部蒸れ感であった.有風時のヘルメット内二酸化炭素濃度は, 無風時に比較して有意に低値を示した.有風時のヘルメット内温度の値は無風時に比較すると有意に低値を示したが, その温度差は0.43~0.47℃と僅かであった.ヘルメット内相対湿度, ヘルメット内絶対湿度, 頭頂部皮膚温, および前額部皮膚温は, 有風と無風の間に有意な差を認めなかった.クラスター分析の結果では, 頭部自覚症状に関する4項目とヘルメット内二酸化炭素濃度は同じ塊に属し, 頭部快適感とヘルメット内二酸化炭素濃度との係わりが密であることが示唆された.
ヘルメット着用時の頭部不快感は, 頭部蒸れ感が主要因であった.有風時と無風時のヘルメット内相対湿度およびヘルメット内絶対湿度に有意な差が見られず, 温度についても僅かに0.43~0.47℃の差であったにも拘わらず, 有風時は無風時に比較して頭部不快感が緩和された.この理由は, 有風時においては, ヘルメット内空気の換気が促進され, ヘルメット着用による水分と熱の移動抑制が緩和されたためと推察される.頭部快適性の指標としては, 従来から用いられている温度および湿度に加えて, 水分や熱移動状況把握の一指標として二酸化炭素濃度を用いることが有用と思われた.
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