日本家政学会誌
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鶏肉のイノシン酸含量に及ぼす汚染細菌の影響
林 真知子中多 啓子
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2003 年 54 巻 6 号 p. 441-448

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抄録

市販鶏肉中の IMP 含量は, 3.06~8.44μmol/g, 一般細菌数は, 3.7 × 104~6.3 × 106 CFU/g, 大腸菌群数は 6.0 × 101~8.5 × 104 CFU/g であった.
市販鶏ムネ肉の皮と目に付く脂肪を取り除いたものをそのまま (無処理肉), または真空包装したもの (真空肉) と, 表面を削り取って表層部の汚染細菌を除去後真空包装したもの (処理肉) を作製し, 4℃ で保存した.その結果, 無処理肉, 真空肉では IMP が7 日目にはほぼ消失したが, 処理肉では, 7 日後でも約半量が残存していた.無処理肉および真空肉の細菌数は, 7 日間を通して 105~106 CFU/g であった.処理肉の細菌数は, 保存開始時に 300CFU/g 以下であったが, 7日目には 106CFU/g に増加した.各試料肉のミクロフローラに違いがみられ, Lactobacilli が 7 日目の処理肉では 97% を占めたが, 真空肉では47%, 無処理肉では 31% であった.
鶏肉に分離菌を接種して 4℃, 4 日間培養したところ, Lactohacillus sp.と Micrococcus sp.を接種した試料肉中の IMP が対照肉とほぼ同程度残存した.さらに, 加熱滅菌した鶏肉にこれらの分離菌を接種して35℃ で培養したが, IMP はほとんど分解されなかった.
Staphylococcus sp.および Enterobacteriaceae の菌を接種した試料肉中の IMP は, 4℃ 培養では多く残存したが, 35℃ 培養では速やかに減少した.以上の結果より, 鶏肉中の IMP の分解に, 肉中の酵素だけでなく汚染細菌も関与すること, 菌種により IMP の分解活性が異なり, Lactobacillus sp.や Micrococcus sp.はIMP をほとんど分解しないことが示唆された.

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