2010 年 37 巻 6 号 p. 673-678
我が国では,食習慣の変化や身体活動量の低下に起因する生活習慣の変化に伴い,脂質異常症を有する症例が増加している。中でも,高コレステロール血症,特に高LDLコレステロール血症は,冠動脈疾患の重要なリスク因子であり,一次および二次予防の観点からもその治療介入は極めて重要である。欧米で行われたスタチンによる高LDLコレステロール血症に対する治療介入は,冠動脈疾患発症の抑制のみならず,全心血管疾患の発症率や死亡率,さらには総死亡率をも有意に低下させることを示した。急性冠症候群を対象としたPROVE IT-TIMI22や安定狭心症を対象としたTNTでは,スタチンによる積極的脂質低下療法が,主要心血管イベントを有意に低下させることを示し,さらに欧米で行われたスタチンによる積極的脂質低下療法のメタ解析でも同様の結果が得られた。一方,冠動脈疾患発症率が欧米に比べ低い我が国においても,高コレステロール血症に対するスタチンによる治療の有用性がMEGAで証明され,また我々が報告したESTABLISHでは,急性冠症候群に対するスタチンによる積極的脂質低下療法が,冠動脈プラークの退縮をもたらすことを明らかにした。したがって,我が国おいても心血管イベント発症リスクの高い症例に対する高コレステロール血症,特に高LDLコレステロール血症に対する積極的な治療介入は,臨床上必要と考えられる。