従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」が注目されている。健康経営優良法人の認定要件として、経営者自身の健診受診(中小企業部門)、ヘルスリテラシー向上のための教育機会の設定、定期健診受診率(100%)、受診勧奨の取り組み、保健指導の実施等、健診・保健指導関連項目が多く挙げられているように、健診は健康経営の入り口ともいえる。
健康経営は大規模事業所でスタートを切ったが、中小規模事業所向けの健康経営優良法人認定制度が2016年度に開始され、2021年度には7,932社が認定を受けている。ただし全国300万社から見ると0.26%に過ぎない。協会けんぽの各支部や自治体が協力して、中小企業の健康経営の推進を支援するようになった。
「健康スコアリングレポート」では、NDB(ナショナル・データ・ベース)を用いて特定健診・特定保健指導実施率、質問票で把握される生活習慣、健診データで把握される健康課題をスコア化している。健診機関においては、正確な健診データの提供、保健指導や受診勧奨、企業・保険者の依頼に基づく健診データ分析など、健康経営を支援する役割が期待される。
2019年に改訂された「地域・職域連携推進ガイドライン」は、地域の関係機関と連携し、地域特性を生かした連携事業を進めるためのものである。健診機関の役割として、①受診者全体の健康課題に関する情報の提供、②地域・職域連携推進事業(講演会、健康教育、健診、保健指導等)への協力、が挙げられている。健診機関には日ごろ地域・職域にわたる地域住民等が受診していること、保健指導の専門職も配置されていることから、地域・職域連携推進への一層の協力が期待される。
今後、ICT活用により、これまで保健事業へのアクセスが不十分だった対象者への健康支援が進むことを期待したい。
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