総合健診
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実践報告
  • 石﨑 竜太郎, 辻本 直美, 山田 千積, 緒方 博範, 波田 祐介, 岬 昇平
    原稿種別: 実践報告
    2025 年52 巻3 号 p. 461-469
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/08/30
    [早期公開] 公開日: 2025/03/05
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】当法人では、人間ドック受診率の低い経営者クラスの受診向上のために、予約時から受診後フォローアップまでを行う専任のコンシェルジュを配置したエグゼクティブ人間ドックのコースを設定している。初年度2017年15名であったが、その後紹介などにより利用者が増え続け、2022年度には166人の利用増になった。経営者からご家族の受診紹介を受けるケースもあり、受診率の低い経営者主婦層の利用にも繋がった。併せて企業従業員の健康診断の依頼を受ける機会が増加した。今回は経営者の満足された内容を検証し、その結果を報告する。

    【方法】対象は、2022年1月から2023年1月までに東京桜十字のエグゼクティブドックを受診した37人。満足度調査となるアンケート記入方式とヒアリング方式を実施。予約申し込みの段階から受診当日の検査終了後まで一連の運用に基づき、施設内環境のハードウエア面と、接遇を含めた対人面でのソフトウエアの両面のサービス内容について満足度調査を行なった。

    【結果】ハードウエア面では施設内の居心地の良さが良いと評価した方が35人(95%)、次にプライベートルーム環境が良いと評価した方が32人(86%)であった。一方、評価が悪かった項目は施設内空調で、良いと評価した方が22人(52%)にとどまった。ソフトウエア面では、医師の対応や医師の結果説明に対し36人(97%)の方から良いと回答があった。また予約申込から予約確定までの調整対応と、エグゼクティブドック検査項目に対しては34人(92%)の方から良いと評価があった。

    【結論】医師、コメディカル、コンシェルジュの接遇サービス面の強化が評価され受診率の向上に繋がっている事が確認できた。また多忙な経営者には「時間を節約したい」という潜在ニーズがあるので、コンシェルジュが窓口となり、安心感を与えたワンストップ・ワンオペレーションサービスが効果的である事が確認できた。

  • 森上 美香, 辻本 直美, 奥野 温子, 藤本 香菜子, 鎌田 成香, 有村 剛, 宮原 龍矢, 光山 勝慶
    原稿種別: 実践報告
    2025 年52 巻3 号 p. 470-479
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/08/30
    [早期公開] 公開日: 2025/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    【はじめに】認知症の2025年問題、超高齢社会を迎え65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されている。この近未来の問題に対応できる人材でありたいと2022年認定認知症領域検査技師の資格を取得した。また認知症は早期介入により発症を遅らせ、進行を緩やかにできることがわかってきた。資格を活かした認知症の正しい理解と啓発活動、地域に向けた認知症予防に繋がる取り組みを行ったので報告する。

    【方法】活動期間:2023年4月1日~2024年3月31日、対象者:地域の健康教室参加者、校区のサロン参加者、予防医療センター内の全てのスタッフおよび健診受診者、予防医療センターへの地域および外部からの来訪者

    活動内容:

    ①月2回の健康教室開始前に10分間の認知症予防に繋がる講話の実施

    ②メディメッセオリジナル体操の中に認知症予防に繋がる二重課題を考案

    ③スタッフに向けた認知症の啓発ポスターの作成、掲示

    ④センター玄関前のパンチングメタルウォールをオレンジ色にライトアップ

    ⑤地域高齢者サロンに出張し、認知症に関する予防と啓発のための講演

    ⑥日本総合健診医学会への参加、発表

    【結果】認定認知症領域検査技師の存在や自分の思いを多くの人々に発信し、知ってもらうことができた。また、多職種連携チームで推進することにより可能性が広がり多くを学び、今後の活動に繋げる課題を見つけることができた。

    【考察】認定認知症領域検査技師、1年目の挑戦として取り組んだ活動は自分の存在や思いを知ってもらう良い機会になった。特に地域の接点になっている健康教室や地域のサロン活動で講話することで、認知症を正しく理解してもらい、認知症予防の啓発普及に繋がった。また、多職種で連携することで、他職種への認知症の理解や知識が深まり、今後さらに広がっていくと感じた。

    【結語】今後も予防医療に関わる活動を推進し、一人でも多くの人の健康寿命の延伸を目指して、今できることをここメディメッセ桜十字から発信していくことが重要と考えた。

大会講演
第53回大会
  • 浦上 克哉
    原稿種別: 大会講演
    2025 年52 巻3 号 p. 480-485
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/08/30
    ジャーナル オープンアクセス

     持続可能な地域社会を維持するためには認知症予防は不可欠である。予防は、一次予防、二次予防、三次予防を切れ目なく行うことが求められる。認知症予防を実践する際には科学的エビデンスのある方法を用いることを推奨する。認知症予防の最も重要な対象者は軽度認知障害(MCI)であり早期発見して予防介入を行うべきである。アルツハイマー型認知症は記憶障害より先行して嗅覚障害が出現するので、早期発見の方法として嗅覚スクリーニングキットの活用が望まれる。早期発見した嗅覚異常へのアプローチ法としてアロマセラピーが推奨される。

     抗アミロイドβ抗体薬であるレケンビとケサンラが処方できるようになり、認知症治療も新たなステージに入った。これまで治療対象となっていなかったMCIへの早期診断が求められることとなる。抗アミロイドβ抗体薬による治療対象者に適切に薬剤を投与し、一方投与対象とならなかった方へは認知症予防の適切なアドバイスを届けることが求められる。

  • 鈴木 秀和
    原稿種別: 大会講演
    2025 年52 巻3 号 p. 486-492
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/08/30
    ジャーナル オープンアクセス

     胃がんは日本における主要ながんの一つであり、その予防と早期発見のための検診が重要視されている。従来、バリウムX線造影検査が胃がん検診の主流であったが、近年では内視鏡検査の有用性が広く認識されつつある。日本では2015年に対策型検診として、漸く内視鏡検査が導入されたが、その普及率は自治体ごとに異なる。お隣の韓国と比較すると、日本における内視鏡検診の普及は遅れているのが現状である。本総説では、胃がん検診の今昔を概観し、ピロリ菌感染率の低下に伴う胃がん発生率の推移、内視鏡検査の有用性、および人工知能(AI)を用いた画像診断技術の進歩について論じる。さらに、胃がんの一次予防としてのピロリ菌除菌の意義についても議論する。今後の展望(未来)として、内視鏡診断技術、特にAI内視鏡のさらなる進化が期待される。

  • 中村 健一
    原稿種別: 大会講演
    2025 年52 巻3 号 p. 493-498
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
  • 植松 孝悦
    原稿種別: 大会講演
    2025 年52 巻3 号 p. 499-507
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/08/30
    ジャーナル オープンアクセス

     日本では25年間も時代遅れのガイドラインに従って、マンモグラフィ検診が実施されてきたが、未だに乳癌死亡率の減少は証明されていない。これは、欧米のマンモグラフィ検診のエビデンスを外的妥当性の検討なしに日本人女性に外挿したためである。欧米のマンモグラフィ検診のエビデンスは、乳房構成が全く異なる日本人女性には直接適用できない。日本人女性は高濃度乳房の割合が高く、40歳代日本人女性のマンモグラフィ検診単独の感度は47%であり、マンモグラフィによる乳がん検診は偽陰性や過少診断の不利益が多い。日本人女性を対象とした唯一のRCT(ランダム化比較試験)であるJ-STARTは、超音波を併用することで乳がん検診の感度が改善することを証明している。J-STARTは乳癌死亡率の減少効果を証明していないが、日本人女性に対する唯一のRCTであり、外的妥当性のない欧米のRCTのエビデンスを外挿するよりも重要で意義がある。

     保険者が自己資金で実施する職域がん検診は、公的な検診ではなく、プライベートな任意検診として位置づけられる。職域乳がん検診の目的である被用者保険加入者と被扶養者の利益、すなわち個人の乳癌死亡リスクの低減、早期発見および早期治療による重症化予防の追求と保険者の労働力毀損防止のためには、精度の高い乳がん検診方法とモダリティを積極的に職域乳がん検診に導入することが求められる。

     受診率も47%と低く、死亡率減少効果のない要因の一つであるが、日本には乳がん検診のマンモグラフィの感度や受診率を正確に把握するシステムがないので、科学的根拠に基づく正確な数値は存在しない。現行のプロセス指標は視触診併用マンモグラフィ検診のデータに基づいて制定されているので、現在推奨されているマンモグラフィ検診単独検診の指標にはなり得ず使用できない。感度(特異度)や受診率といった直接的な乳がん検診を評価できる指標を把握できる科学的根拠に基づく乳がん検診プログラム(組織型乳がん検診)の導入が必要不可欠である。

     次世代の乳がん検診はこれまでの平等の乳がん検診ではなく、高濃度乳房の女性にも配慮し、乳がん検診を受ける全ての女性が最善の結果、すなわち乳癌死を回避できる、「公正な」乳がん検診プログラムを提供する必要がある。

  • 菊池 亮佑, 柴田 淳一, 多田 智裕
    原稿種別: 大会講演
    2025 年52 巻3 号 p. 508-516
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/08/30
    ジャーナル オープンアクセス

     消化器がんは日本のみならず全世界でがん死因のトップであり、早期発見・治療により生存率が向上することから、がん検診を活用した病変の早期発見が重要である。特に胃がんにおいては、日本国内で2016年度から対策型胃がん検診に胃内視鏡検診が追加され、内視鏡医にかかる負荷の増大も課題である。近年、人工知能(Artificial Intelligence; AI)技術の進化により、内視鏡検査にAIを活用した診断支援システムが導入され、消化器内視鏡診断の精度向上や腫瘍性病変の見落としの軽減が期待されている。

     胃腫瘍、大腸腺腫において、現在までのランダム化比較試験でも内視鏡AIの有用性は報告されており、今後の臨床現場での普及が進むだろう。筆者らは2017年に株式会社AIメディカルサービス(以下、AIM社)を立ち上げ、画像上早期胃がんおよび腺腫を疑う領域を検出支援するプログラム医療機器gastroAITM model-G2を2025年から販売開始した。また、対策型胃内視鏡検診におけるgastroBASE screeningも提供し、医師の負担軽減と診断精度の向上を目指している。

     内視鏡AIの社会実装にはまだ克服すべき課題もあり、AIM社でもAI医療機器協議会と共に保険加算やAI開発への補助金など国や政府への提言を行なっている。今回は内視鏡AIの現状をAIM社での内視鏡AIの開発の現況を交え概説し、さらにその未来への展望についても考察する。

  • 梁川 雅弘
    原稿種別: 大会講演
    2025 年52 巻3 号 p. 517-523
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/08/30
    ジャーナル オープンアクセス

     近年、医療分野におけるAI技術の導入が急速に進み、特に画像診断領域において大きな変革が見られる。画像診断におけるAIの役割は、異常の早期検出および診断の精度向上にあり、ディープラーニング(DL)を基盤としたAIシステムが診断作業の効率化に寄与すると期待されている。

     本論文では、まずAI技術の基礎として、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)やビジョントランスフォーマー(ViT)の基本的な仕組みを説明し、それらがどのように画像処理に応用されているかを簡潔に述べる。

     肺癌は依然としてがん死亡原因の第一位であり、早期発見が予後に大きな影響を及ぼす。米国のNLST試験や欧州のNELSON試験により、重喫煙者に対する低線量CT検診の有効性が確認されたが、CT検診に伴う偽陽性や過剰診断の問題は今後の重要な課題である。また、低線量CTと画質の維持はトレードオフの関係にあり、低線量CT画像のノイズ低減も喫緊の課題である。こうした背景のもと、AI技術の進歩がノイズ低減や肺結節の検出にどのように貢献しているかを、胸部X線やCT画像の具体的な症例を交えながら解説する。

     AIの診断性能は、すでに放射線科医と同等またはそれ以上であることが報告されている。AIは人間の診断能にも少なからず影響を与えるが、その判断プロセスがブラックボックスである点は課題であり、説明可能なAI(XAI)の開発が求められる。ChatGPTのような生成AIを含め、今後のAI技術の発展を見据え、AIを最強のパートナーとして活用し、肺癌の画像診断の精度向上およびワークフローの改善につなげていくことが期待される。本論文が、呼吸器診療におけるAIに関する知識の整理や、今後の臨床・研究活動の一助となれば幸いである。

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