総合健診
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日本総合健診医学会 第42回大会
日本総合健診医学会 第42回大会・教育講演4
ドック検診に必要な不整脈の知識
小川 聡
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 41 巻 3 号 p. 451-456

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抄録

 検診で不整脈が検出された場合に考慮すべきは、1)その不整脈が受診者にとって治療すべきものか放置して良いものか、2)将来的にその不整脈が原因で致死的転帰を取る可能性があるか否か、である。自覚症状の有無、不整脈自体の種類も判断材料になる。心室期外収縮に焦点を絞り、より重症な致死的不整脈発症のリスクをどう評価するかを論ずる。致死的転帰の可能性を判断する上で最も重要な要素は器質的心疾患の有無である。ST-T変化を伴う左室肥大、虚血性ST-T変化、陳旧性心筋梗塞所見などを12誘導心電図から判断し、さらに心エコー、負荷心電図、冠動脈CT等を勧める必要がある。以前は、Lown分類で心室期外収縮を重症度分類し、治療適応を推奨する考え方もあったが、CCU、あるいは重症心疾患例以外では役立たない。器質的心疾患が否定されれば、突然死リスクは低いと判断できる。一方、不整脈は検出されなくても12誘導心電図のみから診断できる突然死リスクの病態がある。V1~V3誘導でQRS波に遅れて記録されるε波は、催不整脈性右室心筋症(ARVC)に特異的である。QT延長症候群やBrugada症候群の他、器質的心疾患なしに心室細動を合併する「特発性心室細動」の範疇に早期再分極症候群、QT短縮症候群の概念が提唱されている。QT延長症候群は多形性心室頻拍により、失神、けいれん、突然死を生じる遺伝性疾患である。Brugada症候群は、V1~V3誘導での特徴的なST上昇と心室細動による突然死を主兆とする症候群で、ST波形から、coved型とsaddle back型に分類される。近年心電図自動診断で、この基準に準じて「Brugada症候群の疑い」と記載されるが、失神の既往歴、突然死の家族歴を問診の上、精査の要否を決める。検診での心電図上の僅かな異常に気付くかどうかで、その後の心血管事故を未然に防ぐことが可能である。

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© 2014 一般社団法人 日本総合健診医学会
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