総合健診
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日本総合健診医学会 第42回大会
日本総合健診医学会 第42回大会・教育講演
逆流性食道炎を巡る最新の知識
今枝 博之
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 41 巻 6 号 p. 665-669

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抄録
2006年に欧米より胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease: GERD)に関してモントリオールコンセンサスが発表され、逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症などの食道症候群と、食道以外の症状をきたす食道外症候群に分類された。GERDはわが国でも近年増加傾向にあり、日本消化器病学会からGERD診療ガイドラインが2009年に発表された。GERDの原因として、蛋白質摂取量の増加の一方で魚類や塩分摂取量の低下、ヘリコバクター・ピロリ感染率低下、低用量アスピリンやNSAID服用の増加による胃酸分泌の亢進がある。さらに食道裂孔ヘルニアの増加や脂肪摂取量の増加、亀背、カルシウム拮抗薬や亜硝酸製剤服用の増加などによる下部食道括約筋の機能低下や肥満などによる胃酸の逆流増加が関与している。GERDは食事摂取や睡眠、仕事、QOLにも支障をきたすことがある。機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管障害の合併もしばしばみられ、消化管全体を診療することが望まれる。また、食道裂孔ヘルニアの合併とともにバレット食道やまれにバレット腺癌の合併も報告されている。
GERDは患者の症状から診断がある程度可能で、プロトンポンプ阻害薬(PPI)による診断的治療が有用である。しかし、器質的疾患の鑑別のため上部消化管内視鏡検査が必要である。PPI不応例では多チャンネル食道インピーダンス-pHモニタリングやhigh resolution manometryにより詳細に検討することが可能となった。治療はPPIが基本であるが、初期治療とともに維持療法が重要となる。また、PPIが効果不十分な場合には他のPPIに変更したり、食前の投与や増量、分割投与への変更が報告されている。また、六君子湯や防御因子増強薬、抗不安薬などの向精神薬の投与が有用な場合もある。予防として体重の減量や臥床時の頭位拳上が有用である。内科的治療抵抗例や長期の内服を希望されない場合には腹腔鏡下噴門形成術を考慮する。今後はGERDの治療のみならず、疾患の予防がきわめて重要であり、その確立が望まれる。
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© 2014 一般社団法人 日本総合健診医学会
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