日本総合健診医学会誌
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乳癌検診における超音波検査の有用性
那須 繁井上 幹夫東條 道徳山崎 美樹中野 幸恵船越 健彦岩谷 良一井手 一馬尾田 久美子山崎 昌典宗 栄治森 寿治古賀 淳
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2000 年 27 巻 1 号 p. 43-48

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抄録
人間ドックにおいて視触診 (CBE) , 超音波 (US) , マンモグラフィ (MMG) の併用による乳癌検診を実施した。のべ受診者7, 114名 (実受診者5, 546名) に対して, 要精検者数536名 (要精検率7.5%) , 精密受診者数409名 (精検受診率76.3%) , 発見癌25例, 癌発見率0.35% (対実受診者0.45%) , 早期癌15例 (60.0%) , 乳房温存術13例 (52.0%) と良好な検診成績であった。年齢階層別癌発見率は, 30歳代0.06%, 40歳代0.46%, 50歳代0.36%, 60歳代0.70%で, 40歳代から急増していた。発見癌25例におけるCBE, US, MMGの検出率はそれぞれ44.0%, 88.0%, 68.0%で, USの検出率はMMGに比べ高かった。
MMGで検出できなかった乳癌8例中3例は, 精検時に実施されたMMGで描出されたが, 5例は描出されずMMGの限界であった。また, 検診時MMGで異常なしとされた6, 515例のなかに, USでは良悪性の鑑別に注意を要する区分に判定された例が535例 (8.2%) あり, 実際に7例の癌が含まれていた。今回の成績から, MMGの乳癌見落とし率は約30%, USによる見落とし率は約10%と推定され, USはMMGに比べ病変の検出能においてかなり優れていたが, さらにUSの方がより早期の癌の検出にも優れていた。
死亡率の低下だけでなく, 乳房温存術の施行を視野に入れた乳癌検診においては, USとMMGの併用が望ましいが, USとMMGの比較ではMMGよりもUSの実施がより有用と考えられた。
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