抄録
臨床化学検査の領域において, 検査値の標準化が進められるなか, 1992年米国臨床検査標準委員会 (以下NCCLS: National Committee for Clinical Laboratory Standards) 指針案により, 基準範囲の定義, 設定の仕方および利用の仕方が具体化され実用的となった。この指針案に基づいて, 1997年6月から12月までに当施設において健康診断を受診した島根県内のJA職員および地域住民7, 197名 (男性: 3, 287名, 女性: 3, 910名) を母集団とし, 設定根拠を明確にしたHbAlcの基準範囲を算出した。併せて健診におけるスクリーニング指標の設定を試みた。
統計処理より得た基準範囲は4.4~5.5%であり, 上限値は老人保健法によるスクリーニング基準値5.5%と一致した結果が得られた。JDS指標の5.8%に比べ低値を示したが, 健常集団を基準標本として求めたものであること, また軽度耐糖能障害を拾い上げることを重視する健診業務においては, 上限値5.5%はカットオフ値として妥当なものであり, スクリーニング指標として有効であると思われた。