今日, 我が国は多くの疾病を克服し, とりわけ熱帯感染症, 寄生虫症は過去のものと軽視される傾向にある。また現在, 年間1, 680万人以上の邦人が熱帯感染症, 寄生虫症に対する十分な知識, 対策を持たないまま世界各地に渡航している。しかしながらグローバルな見方をすれば, 開発途上国では熱帯感染症, 寄生虫症が依然として猛威を振るっており, 抵抗力のない邦人がこれらに感染する危険性が増加している。さらに近年Emerging Diseasesとしてラッサ熱, エボラ出血熱 (1類感染症) など新しい感染症の出現, マラリアや結核のように古くから存在する感染症の薬剤耐性の獲得 (Re-Emerging Diseases) など新たな脅威が我々を取り囲んでおり, 国際的視野に基づいた輸入感染症対策が必要不可欠である。産業医, 健診医がこれら輸入感染症に直面した場合, 多くが診断, 治療に戸惑い, 誤診する危険性を否定できない。その対策として感染症に国境はなく, 輸入感染症はボーダレスであるとの認識を深め, 問診の充実とインターネットによる情報収集が重要である。産業医, 健診医は新感染症予防法をふまえたうえで, 輸入感染症に対する正確な診断, 適切な治療, 予防, 最新動向を入手し, 帰国後健診に対応しなければならない。
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