抄録
人間ドックを受診した中高年齢者における生活体力の経年変化と骨・関節・筋肉などの運動器疾患の予防について検討を加えた。
1989年と1998年に藤間病院総合健診システムを受診した一泊人間ドック受診者の体力測定結果を比較すると, 1998年の30歳代男性において, 身長が大きく, 体重が重く, 体脂肪が多く, 最大酸素摂取量が少ないという有意な傾向を認めた。
藤間病院整形外科を受診したスポーツ障害患者数は, 高校生の受診者をピークとして加齢とともに減少する傾向を認めた。中高年齢者のスポーツ障害による受診者は少ないとはいえ, 運動機能が減退する中高年齢者は, 他の年代より健康保持のために運動を実践する者が多く, 個人の特性に合った運動をしないと, 骨・関節などの運動器の傷害が発生しやすいと考える。
国民生活基礎調査によると, 腰痛は有訴者率が最も多い。腰痛健診として, 腰部の柔軟性の検査法としてsh隸ber testなどを実施し, 個人の特性を把握し, 腰痛の発生要因を検討することは, 腰痛予防の意識を喚起する点で有用であると考える。
寝たきりの原因として脊椎椎体圧迫骨折や大腿骨頸部骨折などの高齢者の骨折は重要であり, その対策として骨量の維持と転倒予防が大切である。脊椎椎体骨折の危険閾値の指標として, CXD法による, m-BMD2.0or r-BMD2.4を基準値として採用し, 骨の健康管理の必要性を喚起している。転倒と体力測定項目の関連性の検討では, 膝周囲筋力, 歩幅指数, 閉眼片脚起立時間, 長座体前屈値が有意な相関性を有していた。これらを参考にして転倒予防体操を考案し指導している。
人間ドック受診者に体力測定を行い, 個人の特性を把握したうえで, 生活指導および運動器疾患の予防指導を行うことが, 健康寿命の延長に役立つことを願いながら実施しているのが現状である。