日本総合健診医学会誌
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健診における正常眼圧緑内障の頻度および異常出現前後の健診所見について
板山 由美子佐藤 泰子栄田 千春松本 弘幸岡野 裕宇津木 道弘遠藤 成美山澤 〓宏
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2000 年 27 巻 4 号 p. 389-394

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抄録
成人の2%に正常眼圧緑内障 (NTG) があり, 循環系異常と関係があると言われている。そこで我々は, 健診センターの受診者を対象にNTGの実態調査を行い, さらに眼底の中途異常者について, 異常出現前後の健診所見の比較検討を行ったので報告する。
方法としては, ポジフィルムにて両眼各1枚の眼底写真を撮影し, 眼科医により, (1) 視神経乳頭縁での血管屈曲bayoneting, (2) 乳頭辺縁消失notching, (3) 網膜神経線維層欠損Nerve Fiber Layer Defect (NFLD) , (4) 乳頭縁での線状出血splinter hem-orrhage, の四項目について判定を行った。さらに中途異常者を検索し, 異常出現前後における健診所見について比較検討を行った。
その結果, 平成8年11月1日より9年10月31日の1年間で, 当健診センターの受診者10, 490名中NTGにおける視野異常者は69名であった。精査受診しない不明者76名にも異常が同率 (視野異常者/精査勧告者) とすれば, 有病率は1.0%と推定された。視野正常群と異常群における健診所見を比較検討したが, 循環障害を反映すると思われる, 脂質系, 血糖値, 血圧, および眼圧について有意な差は見られなかった。さらに, NTG69名について健診センターの開所までさかのぼり, 初回受診から最近までの眼底所見を検索した。その結果, 初回異常者は57名 (83%) , 中途異常者は12名 (17%) であった。中途異常者12名について眼底の異常出現前後における健診所見を比較検討したが, 前述の脂質系, 血糖値, 血圧, および眼圧について有意な差は見られなかった。また心電図波形においても違いは見られなかった。
以上により, NTGは健診所見には反映しないものと思われた。しかし, 健診においてNTGを検出するには, 眼底写真で前述した四項目の有無を判定することが重要であると考える。
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