抄録
総合健診において安静時心電図のみでは見落とされる可能性のある不整脈を効率よく発見するために, どのような症例に心電図の3分間連続記録を行うことが有効であるかを調べ, さらに受診者の心疾患に関係すると思われる既往歴および自覚症状の面からも検討した。
総合健診受診者で, 心疾患に関係あると考えられる既往歴あるいは自覚症状を有するものや安静時心電図に不整脈や房室ブロックが出現したもの計1, 525例を対象として安静時心電図に続いて3分間連続記録を行った。また, 安静時心電図に異常を認めず, かつ心疾患の既往歴や自覚症状のない対照者363例を無作為に抽出し, 同様に連続記録を行った。
既往歴や自覚症状の有無により新たな不整脈の出現率を比較し, さらに既往歴や自覚症状の種類によって新たな不整脈の検出率を比較した。
安静時心電図に不整脈や房室ブロックが出現していたものを除いた1, 153例中102例 (8.8%) に連続記録で新たに期外収縮が出現し, 対照群での期外収縮出現者6例 (1.7%) 比べて有意に高率であった。
既往歴や自覚症状との関係について調べると, 既往歴があるものが471例であり, 期外収縮の既往歴のあるもの370例のうち41例 (11.1%) で新たに期外収縮が出現した。自覚症状のあるものは750例であり, 動悸を訴えたもの316例中33例 (10.4%) , 結滞を訴えたものでは67例中7例 (10.4%) に新たに期外収縮がみられ, これらのものでは対照群に比べ新たな期外収縮が高率に出現した。
健診受診者において, 安静時12誘導心電図に異常を認めないものでも不整脈の既往歴のあるもの, あるいは動悸や結滞を訴えるものに3分間連続記録を行うと不整脈, 特に期外収縮の検出率が高められるものと思われる。