総合健診
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職域定期健康診断受診者の満足度に関する研究
工藤 安史佐藤 敏彦細井 香三輪 祐一相澤 好治
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2005 年 32 巻 3 号 p. 287-293

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抄録

職域定期健康診断の満足度の向上について検討する目的で, 企業外労働衛生機関で出張定期健診を受けた労働者1, 511人を対象にアンケート調査を行った。質問内容は, 性別, 年齢に加えて, 大病経験の有無, 通院中の有無という受診者の属性・基本事項, 定期健診の全体的な満足度, 医師に関連する要因, 定期健診における検査に関連する要因, プライバシーの保護や待ち時間などの医師や検査以外の要因について, 「満足」, 「どちらでもない」, 「不満足」, 「わからない」の4段階で評価を行った。回収できたアンケート用紙のうち, 「わからない」という回答, および欠損値のある回答を除いた合計628枚のアンケート用紙を解析対象とした。平均年齢は35.1歳 (レンジ: 20~70) で, 男性が324人, 女性が304人であった。
定期健診の全体的な満足度に影響を与える要因について調べるために, 性別, 年齢, 大病経験の有無, 通院中の有無, 労働者の所属する企業ごとの差異, 医師に関連する要因, 検査に関連する要因, 医師や検査以外の要因を説明変数, 全体的な満足度を非説明変数とするステップワイズ法による重回帰分析を行った。その際, 変数選択の基準はp値が0.05未満としたが, 性別と年齢は交絡因子となり得ることから, 統計学的な有意性に関係なくモデルに入れた。
結果, 全体的な満足度に有意に関連していた項目は, プライバシーの保護, 検査担当者の技術力, 検査担当者の迅速さ, 検査担当者の説明力, 検査担当者の話を聞く姿勢, 検査担当者のマナー, 医師のアドバイスカ, 医師のマナー, 通院中でないことであった。
以上のことから, 待ち時間などの定期健診の本来の目的でない非本質的な要因について検討するよりも, 医師や検査など本質的な要因について検討することが, 全体的な満足度を向上に重要だと考えられた。また, 通院中の受診者は, 健常者に比べて, 定期健診に期待していることが高く, 通院中であること自体が定期健診を厳しく評価する要因になるのではないかと考えられた。

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