抄録
本研究は高齢者の温熱感受性を調べるために行われた。皮膚の温熱感受性を定量化するために簡易温冷覚刺激装置が用いられた。この装置を使って,被験者の温冷覚闘値とその差から求められる温度差識別闘値を測定した。また,周囲気温や手の指先,手掌,手背などの皮膚温もまた測定された。個々の被験者の衣服断熱性が,それぞれの着用している重ね着から推定された。主な結果は,高齢群の方が対照群よりも手背皮膚温は有意に低く,着衣量は有意に多いにも関わらず,温冷覚闘値,温度差識別闘値に関しては,高齢群と対照群との間に有意な差を認めなかった。高齢群においてのみ冷覚闘値と手背皮膚温および周囲気温との有意な相関関係が認められた。