2019 年 62 巻 3 号 p. 114-120
耳疾患をもたない健常者の耳管機能を調べるため, 20~50歳代の50人100耳について音響法, インピーダンス法 (バルサルバ法, トインビー法, 深呼吸, 鼻すすり) による耳管の開閉を検討した。 音響法では82.0%, インピーダンス法ではバルサルバ法で82.0%, トインビー法で65.0%が陽性を呈した。 音響法, バルサルバ法, トインビー法の3法すべてが陽性となったのは51%であった。 音響法における耳管開放時間は 105~2,455msec で平均値は 569.5msec であった。 音響法またはバルサルバ法で耳管の開閉が確認されない症例が全部で35耳あり, 中耳圧外傷のリスクが若干高いと考えられた。 開閉持続時間が 1,000msec を超える “音響法延長” 症例, および深呼吸, 鼻すすりによる “鼓膜変動” 症例があわせて16耳に認められ, 何らかの誘因とともに耳管開放症の症状が出る可能性のある潜在的な症例と推測された。 健常者でも耳管機能検査は正常パターンを示さないこともあるため, 耳管の状態を把握するためには自覚症状, 理学的所見, 複数の耳管機能検査の結果を総合して判断していくことが必要と考えた。