2016 年 23 巻 1 号 p. 17-24
我が国は、厚生労働省の推計によると認知症患者は予備群(軽度認知障害)を含めて800万人を超えるとされる。そうした状況を背景に、高齢福祉施設や、医療分野でも音楽療法や療育音楽が注目され、効果が期待されつつある。本研究は、近畿地方の5か所の高齢福祉施設において、開放された空間と閉鎖された空間で行われている音楽療法を調査した。そして、高齢者の音楽療法の声の音量やリズム感など音楽に対する反応について観察し、3段階で得点化した。また音楽療法後の高齢者の生活の変化を施設職員に質問紙により調査し、そのデータを男女、介護度、年齢別に分析検討した。その調査から、男女別では男性、介護度別は要介護3、年代別では90代の得点が高く、アンケート調査は60・70代の場合が高くなった。さらに開放された空間より閉ざされた空間で音楽療法を行う方が得点は高く、音楽療法士が指導している施設の方が、平均得点が高いことが示唆された。