2020 年 27 巻 1 号 p. 27-37
日本における心理的気候パラドックスについて検証し,効果的なコミュニケーションの方策を探ることを目的に,情報提供動画を盛り込んだインターネットアンケート調査を実施した。結果,下記の知見が得られた。
第1に,多くの人は,気候変動問題に危機感を持ちながらも,気候変動対策によって生活環境や経済が悪化すると捉えている。第2に,具体的な脱炭素社会の姿はイメージされていない。とりわけ,温熱環境を含む生活環境の改善や,地域経済の向上と結びつけたものとしては,ほとんどイメージされていない。第3に,このような認識が認知的不協和を生み,これが,危機感や責任感が脱炭素社会の支持度へと結びつくことを阻害している可能性が高い。
脱炭素社会へのポジティブな態度の形成のためには,対策のコベネフィットを共有するコミュニケーションによって,生活の質の向上と脱炭素社会づくりが,同じ方向性の連続したものと認識されることが重要である。