人間と生活環境
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地球温暖化の健康への影響
内山 巌雄
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2002 年 9 巻 2 号 p. 63-69

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抄録

IPCCが2001年に公表した第3次評価報告書では,地球温暖化の影響が世界各地で現れてきたと結論し,2100年には1990年と比較して平均気温が1.4〜5.8℃上昇すると予測している。また影響を直接影響と間接影響に分け,生態学的影響に加え社会・経済・人口学的影響も考慮している。東京では最高気温が30℃を超えると熱中症の発生が増加することが観察されているが,65歳以上の高齢者がハイリスクグループである。また日最高気温と死亡率の関係では,日最高気温の上昇とともに日死亡率は低下するが,33℃を超えると再び日死亡率が上昇する。死亡率の最も低い日最高気温は日本の各地で異なり,平均気温が低い地域はこの気温が低い傾向が認められ,温暖化の影響はどの地域でも認められる可能性がある。暑熱に対する反応を自律神経機能の1種であるLF/HF,HFを指標として日本人とタイ人の成人,高齢者を比較したところ,タイの成人が最も暑熱に対する反応は優れていたが,日中空調のあるオフィスで働く成人はその機能が低下していることが示唆された。その他,動物媒介性感染症の増加,光化学オキシダントの悪化による呼吸器疾患の増加の可能性について解説した。

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© 2002 人間-生活環境系学会
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