抄録
建物に使用される建材は新建材が主流となり、室内空気汚染が原因とされる健康被害などの問題が指摘され、
自然素材への関心が高まっている。自然素材としての土は蓄熱性能や調湿性能が期待できることから、再評価され
つつある。本研究では土壁の外側に断熱材を施した工法を開発し、これまで実験棟における実測調査や数値シミュ
レーションにより、その温熱環境について明らかにしてきたが、本報では、土壁の蓄熱性能の定量化を目的として、
実験棟における室内温度のほか、壁体の表面温度、熱流束の測定により、壁体の吸熱・放熱特性を把握し、土壁と
ボード下地の漆喰壁との比較を行った。その結果、暖房使用時の壁面熱流の傾向を把握し、また、両棟の日積算吸
熱量・放熱量は、土壁棟の方が多いことを明らかにした。