抄録
症例は 82 歳,女性。某年 12 月に尿路感染症で当科に入院した。退院翌年 1 月 X - 10 日より再び 38 ℃台の間欠熱を認め,X 日当科再入院となる。右CVA叩打痛陽性,両下腿浮腫あり,WBC 3610/μL,CRP 8.2 mg/dl,LDH 625 IU/l,pH7.46,乳酸 66.6 mg/dl,造影CTでは明らかな熱源はなく,混濁尿を認め,腎盂腎炎と心不全に伴う循環不全の合併を疑った。抗菌薬及び利尿薬等による加療を開始し,炎症所見の改善が得られ,循環動態も維持された。一方,LDHおよび乳酸値は徐々に上昇したため,骨髄穿刺を施行,血管内リンパ腫(IVL)が強く疑われた。IVLに対する加療開始後速やかに乳酸値・LDHは減少,浮腫も消失した。IVLの臨床像は非特異的な臨床症状が多く,日常で遭遇する虚弱高齢者の感染症と変わりがない。繰り返す感染症,高乳酸血症からIVLの存在を想起することはプライマリケア医にとって有用である。