2023 年 19 巻 4 号 p. 281-287
近年,平均寿命が延びていることと医療の進歩により超高齢者にも積極的に手術が行われる。しかし超高齢者は加齢に伴う臓器の機能低下や予備力の低下を生じており術後合併症に注意しなければならない。症例は 92 歳男性。S 状結腸憩室炎による狭窄に対して手術を行った。術後 7 日目に胆嚢炎と横隔膜下膿瘍の所見を認めたため翌日手術を行った。胆嚢は穿孔しており胆汁による汎発性腹膜炎となっていた。術後 19 日目にタール 便が出現しショック状態となった。内視鏡検査にて十二指腸球部に出血を伴う潰瘍を認めた。術後 28 日目に深部静脈血栓症による左下肢の浮腫が出現した。超高齢者は単一の臓器だけでなく複数の臓器の機能も同時に障害を受けている場合が多いので,外科治療においては総合診療的視点にたった観察と対応が要求される。今回超高齢者の消化器疾患の術後に,短期間に連続して比較的重篤な合併症をきたした症例を経験したので報告する。