日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
原著
臨床研修医によるインシデント・アクシデントレポートの 提出義務化が及ぼした影響に関する解析
小尾口 優太藤原 蓮阿部 祥英 川島 真美栗城 綾子森田 將大槻 克文横山 登
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2025 年 21 巻 5 号 p. 165-171

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抄録
インシデントの分析は医療安全の質向上に寄与する。当院では臨床研修医からの報告数が少なく,2022 年度から研修の修了基準に年10件の報告が義務化され,その効果を分析した。 対象は2014~2023 年度の10 年間に臨床研修医が報告した742 件である。義務化前後で報告数は203 件(8 年間)から539 件(2 年間)に増加した。報告内容は「薬剤」,「治療・処置」,「検査」が上位の3 つを占め,義務化前後で変化はなかった。事象レベルは0 および1 の割合が67.0%から88.2%に増加し,3a の割合は7.9%から1.3%に低下した。報告の義務化によって軽微な事象を報告しやすくなった可能性がある。一方,年末,年度末の報告数が急増し,報告の目的が「安全管理の改善」ではなく「研修の修了」になった懸念がある。また,既報や当院の医師よりも10 倍多い報告を求められ,それが妥当かどうかは,今後の検討課題になる可能性がある。
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